人格心理学「人格の変容」メモ

人格の成長や変容は、主体性や能動性を強固にすることで達成されるのではなく、それらが行き詰まり、自分にどうしようもなく降りかかってきた経験の意味を問わざるを得ないところからこそ始まる。

 

世界や人間自身に対する見通しがつかなくなり、混乱したところからこそ、それを意味づけようとしたところからこそ、近代自我が生まれ、近代という時代が始まった。

 

自我の成長は、それが能動性を獲得して世界の見通しを拡大することではなく、自分が把握できない、自分を超えた、時には自分を脅かす他者の中に投げ込まれる中で生まれてくる。

 

意味づけられないものと向かい合うことにより、自分が一旦壊れることで、変容への道が開かれる。

 

異質なものとの出会いから自己が否定され、新たな自己の誕生へと至るプロセスをたどるのはたいへんな作業である。

 

錬金術:およそ不可能な試みであったからこそ、そのプロセスを記述することが人間の心、人間の世界観、変容とはなんであるか、心のプロセスを反映するものとなった。外側の変容が不可能だからこそ、変容をイメージし法則化することが極めて心理的な作業となった。その世界観は極めて心理学的。

 

人は様々な経験をして揺るがされ、大きく傷つき、混乱する。しかし、それを克服したり、無いものにしようとするのではなく、その事柄の奥に何があるのか、その意味を探求しようとするところからこそ、「私」の新たな中心性が定まり、新たな「私」の変容に開かれていく。