WBCを振り返って

日本にとって、久々に明るい話題になったWBC。仕事中にも見ている人も多かったのでは?ちなみに決勝戦、僕は会議中で全く見れず。会社のテレビ(普段は日経のCS放送を無音声で流している)もWBCを流しているっていうのに、会議の休憩中にワンセグで見るぐらい。でも、実はじゅんぽろに速報をお願いしたり、携帯で速報サイトを見ながら、会議してたけど…(会議で発言しながら)。

ちょっと長くなるが、振り返ってみたい。ひとりごとに近いので、興味のある方だけどうぞ。

言いたいことはいろいろあるが、以前も書いたとおり、WBCについては世界一を決める大会とは見ていないので、大会の様式についてはノーコメントにしておく。今回明確になったこと・感じたことだけ書く。

もちろんアジア以外の予選も含めて、全試合ダイジェストは見たが(多忙な中、録画したのを早送りして)、一番感じたのは「現在のベースボールの中心は間違いなくアジア(韓国・日本)だ」ということ。
アメリカや中南米の国々が、いくら言い訳をしても(調整不足・メンバー不足とか言っているが)、今回で「プレーの質が違うことが明確になった」と感じる。

特に違うのは、投手の質(制球・変化球などを含め全て)、細かい技術(守備・連携・ダブルプレー・つなぐ攻撃…)など。キューバも技術は良いが、今回は投手のタレント不足だった。

それ以外の他国が優っているのは、パワーのみ。確かに長打力はあるが、それは予選での話であり、韓国・日本の投手陣は全く打たれる気配がなかった。

ちなみに、メジャーリーグMLB)のレベルが低いと言っているわけではない。MLBは各国のトップレベルが集まった最高の場所である。その事実は何も変わらない。

仮定の話だが、今後WBCにトップメジャーリーガーが続々と出てきて(今回は辞退者だらけ)、エース級が投球数制限なしで投げ、開催時期が変更になっても、「結果は大きく変わらないんじゃないか」と今回見ていて感じた。第1回の時はそこまで見えなかったが。ただ、トーナメントなので、たまたま良い投手と対戦したら負けるかもしれないけどねぇ…。

さて、5回も対戦した韓国と日本。日本が優勝したが、実力は「全く互角」だと思う。日本が3勝2敗だったが、そのうちの2勝は韓国が自ら負けに行ったと思う。大差がついた試合は捨てていたし、準決勝前も次の組み合わせを見て、わざと負ける選択をした。韓国がそういうことをやるチームになったということだけでも、レベルが相当上がっていると感じた。

そういう意味でいわゆる「ガチンコ勝負」は決勝のみだった。決勝も試合は日本が押していたが、わずかな差だったと思う。投手陣の豊富さで、やや日本が優った。韓国は実力派左腕3本のうち1人が不調で、そのしわ寄せが決勝の中継ぎ投手にきたと思う。一方の日本は、北京五輪の時にはなぜか選出されなかった岩隈の活躍が大きかった。それに杉内が好調だった。松坂はそれなりだったし、ダルビッシュもそこそこだったが、やはり岩隈が大きい。

采配面で評価されている原監督だが、実際に作戦(打順・狙い指示・サインなど)を考えていたのは伊東コーチ。もちろん、表に立って、いろいろとプレッシャーを感じながら戦った原は偉いと思うが(WBCの監督は現役監督には難しい)。今回は伊東コーチと山田投手コーチ、高代コーチの存在が大きかった。そこが北京五輪と大きく違った。特に、ローテーションをうまく組んだこと、抑えを藤川にこだわらなかったこと、打線も青木を中心に使ったことなどが大きかった。内川の起用なども、要所で効いていたと思う。イチローの不調を全員でカバーできたのは日本の強みだし、采配はうまかったと思う。

そして、最後にそのイチローの話を。メディアでは、決勝の活躍を「最後まであきらめない気持ちが打たせた。イチローはすごい!」とあったが、彼が最後に打てたのは技術面の話だけだと僕は思う。多少は気持ちもあると思うが。

準決勝(アメリカ戦)の最終打席でヒットを打ったが、その前の打席でフォームが変わった(というか、やっといい形に戻った)。それまでは、ひどい打ち方だった。崩れまくっていた。時々ヒットが出た時(特に3安打した日)、マスコミでは「いよいよ復活!」とか言われていたが、僕は全くそう見てなかった。じゅんぽろにも「復活じゃない、たまたま打っただけ。今後はヒット出ないよ」と言っていた。

具体的に言うと、構えた時のグリップの位置に問題があった。本来は、それがキープされたまま、打ちに行って、最後にバットが出てくるとバッチリなのだが(いわゆる、ヘッドが遅れて出てくる形。インサイドアウトにスイングできる)。それが全然できていなかった。そのため、バットのトップも入りすぎたままだし、ドアスイング(遠回り)だし、こねて(引っ掛けて)セカンドゴロ、もしくは詰まった内野フライとかばかり。背中も投手の方を向いていて、速球には振り遅れるし、最悪だった。

本当は言葉にできるほど単純でなく、もっと深い話なのだが…。体とバットが一緒に出てきてしまい、いわゆる手打ち(手だけで当てに行く)になっていた。野球をやっている人にはわかると思うが…。難しくて、ごめんなさい。

イチローの打ち方は凡人と違うので、そのあたりのメカニズムが戻ってくるのが、毎年5月ぐらいなのだ。だから、3月の短期決戦中には戻らないだろうと見ていた。それが、何がきっかけかは不明だが、アメリカ戦のその打席でバチッと復活したのだ。これを見て、僕はじゅんぽろに「わぉ、戻った。明日はイチロー打つよ」と初めて言った。

これも野球経験者にはわかると思うが、いわゆる「割れ」が初めて形になった。「割れ」を少し解説すると…難しいなぁ。例えば矢を放つ時、弓を思いっきり引くが、その形が綺麗にはまったときだけ、矢が綺麗にまっすぐ飛んでいくと思う。「割れ」って、その構えに似ている。思いっきり引けないと矢が「ショボン」と(落ちるように)飛ぶし、ちょっとだけ引いた時も同じだと思う。バットと体は距離をうまく保ち、「割れ」を作れないと良い打球(力強いライナー性の打球)は飛ばないのだ。

決勝は、バッチリ「割れ」ができた状態で打ちまくっていた。イチローの場合、相手の投手がどうこうというレベルの選手ではない。自分の形で打てるか否かだけ。生放送で見られなかったので、録画したものを見たが、決勝タイムリーの打席も、ファールでうまく粘って、冷静にヒットを打てる球が来るのを待っていた。

そういう意味では、決勝に関しては投手陣の踏ん張りと、イチローが活躍した分だけ、韓国よりも強かったんだと思う。

うまく表現できているか分からないが、彼に今大会で焦りがあったとすれば、それは打てないことよりも、「自分のフォームを取り戻すことに関して、大会中に間に合うか?」ということだけだったと思う。取り戻すというか、彼は常に新しいフォームを模索している。バッティングとは微妙なもので(生き物だねぇ)、その時その時で、しっくりくるものを探し続けるものだ。年齢・体調・筋肉などで年々変わる。日本にとっては「イチローが間に合って良かった!」ということだろう。では、イチローが今シーズンこのままずっと調子が良いかどうかは、もちろん不明。バッティングは生き物だから。

そういう視点でイチローを見つめていた(かれこれ18年ぐらい見てるので、気になる)。大会自体は日本や韓国に注目しつつ、中南米の好きな選手もチェックして単純に楽しんだ。結果に関して言えば、日本と韓国が今後も切磋琢磨して、世界をリードしていく時代が続きそうだ。

ざーっと、勢いで書いてみた。「こんな見方をしてました」という紹介でした〜。